国公立の医学部を受験するためには、数学や理科、英語の勉強はもちろん、社会や国語の勉強も必要となる。
一見、医学に関係のないことをなぜ勉強するのか、そう思ったことはないだろうか。
因数分解の解き方を知らなくても、江戸時代に何が起こったか知らなくても、医者になってからまったく困らないんじゃないか? そんなことを覚えるならば、もっとも関係がありそうな、生物や化学あたりを重点的に勉強したほうが将来のためになるんじゃないか? そんな声が聞こえてくる。
しかし、学力を身につけること、それにはもっと深い意味があるんだ。
それはね。「勉強を通して自分を成長させる」ということ。
高校で習得すべきことを身につけ、入試でボーダーライン以上の点数をとるためには、想像以上の努力が必要となる。
遊びたい、怠けたいという自己をコントロールし、着々とやるべきことを実行していく地道な努力が必要なんだ。
そして、自らを制することを覚え、長期間にわたる勉強で「自分を成長させる」ことができた者にのみ、初めて「医学部合格」という栄冠が与えられる。
「役にたつからやる、役にたたないからやらない。」そんな、ちっぽけな考え方では、とても医学部に入ることはできない。
「私立ならば科目数も少ないし、入りやすいから。」そんな、のほほんとした考え方では、少しは易しいといわれるところにでさえ入ることはできないだろう。
勉強するということは、たんに知識を身につけるためじゃない。自分を鍛える「道場」なんだよ。
むだな屁理屈を言ってる暇があるなら、自分自身を鍛えなさい。
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10年後、外科医となったあなたは…
* * *
ある年のクリスマスイヴ、午後8時。
医師としての多忙な一日が終わり、あなたは帰り支度をしていた。きょうは息子の1歳の誕生日でもある。いつもより早く帰宅し、家族で祝う予定だった。
鞄を持ち部屋を出ようとしたとき、病院の外から救急車のサイレンの音が近づいてきた。
看護婦があわただしく駆け込んできて、叫ぶように言う。
「急患です。緊急のオペが必要なようです!先生、お願いします!」
患者は交通事故で、腹部に内出血を起こしていた。胸部も強い打撲を負い、呼吸が浅くなり、脈も弱くなっている。
やはり緊急の手術が必要だった。
あなたは手術着と手袋、そしてマスクを着用して手術室に入る。無影灯が点灯し、患者の腹部が照らされる。
「メス!」あなたは渡されたメスを握ると、その腹部にあてた。
重症患者だ。
長い戦いになる。
終わるのは夜中の12時をまわるだろう。
おまけに連日、遅くまで仕事をし、体も精神も疲れきっている。
だが、この患者の命は、あなたの腕にかかっているのだ。
休みたい、きょうは家族と団欒したい、そんな気持ちを振り切って、あなたは患者の腹部にメスを入れた。
* * *
さきほど、医者になればお金に困ることはまずない、と言った。人々からは尊敬の眼差しでみられるにちがいない、とも言った。
だがその前に、あなたは、あなたの都合を捨てて、人のためにメスを握る覚悟ができているだろうか。
今一度、よく自分に問いかけてみて欲しい。
その覚悟ができているなら大丈夫だ。医学部へのパスポートを半分以上、手にしたといっても過言ではない。
たとえ今の偏差値が医学部に及ばなくても、その気持ちを忘れさえしなければ必ず合格するだろう。
自分のためにというより、人のために苦労して勉強するんだ、そう心のベクトルがピタリと定まったとき、あなたの人生が変わることは間違いない。
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