10年後、外科医となったあなたは…
* * *
ある年のクリスマスイヴ、午後8時。
医師としての多忙な一日が終わり、あなたは帰り支度をしていた。きょうは息子の1歳の誕生日でもある。いつもより早く帰宅し、家族で祝う予定だった。
鞄を持ち部屋を出ようとしたとき、病院の外から救急車のサイレンの音が近づいてきた。
看護婦があわただしく駆け込んできて、叫ぶように言う。
「急患です。緊急のオペが必要なようです!先生、お願いします!」
患者は交通事故で、腹部に内出血を起こしていた。胸部も強い打撲を負い、呼吸が浅くなり、脈も弱くなっている。
やはり緊急の手術が必要だった。
あなたは手術着と手袋、そしてマスクを着用して手術室に入る。無影灯が点灯し、患者の腹部が照らされる。
「メス!」あなたは渡されたメスを握ると、その腹部にあてた。
重症患者だ。
長い戦いになる。
終わるのは夜中の12時をまわるだろう。
おまけに連日、遅くまで仕事をし、体も精神も疲れきっている。
だが、この患者の命は、あなたの腕にかかっているのだ。
休みたい、きょうは家族と団欒したい、そんな気持ちを振り切って、あなたは患者の腹部にメスを入れた。
* * *
さきほど、医者になればお金に困ることはまずない、と言った。人々からは尊敬の眼差しでみられるにちがいない、とも言った。
だがその前に、あなたは、あなたの都合を捨てて、人のためにメスを握る覚悟ができているだろうか。
今一度、よく自分に問いかけてみて欲しい。
その覚悟ができているなら大丈夫だ。医学部へのパスポートを半分以上、手にしたといっても過言ではない。
たとえ今の偏差値が医学部に及ばなくても、その気持ちを忘れさえしなければ必ず合格するだろう。
自分のためにというより、人のために苦労して勉強するんだ、そう心のベクトルがピタリと定まったとき、あなたの人生が変わることは間違いない。
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